「今週の一言(いちげん)」第238話販売の敵は見えぬが、臭う。
Fromノグチ
三週間ほど前、実家の小売店で、起きた事件です。
その日は朝から姪と一緒に新しいiPadレジのために、商品登録をしていました。
飲料の大きなショーケースには、ビール・缶コーヒー・ペットボトルと多品種。
姪と二人、どうやって登録しようか?とショーケースの裏へ回りました。
ショーケースの裏側は、陳列している商品の在庫が積まれています。
ショウケースへ商品を補充するには、
すぐ手に届くところに在庫があると、便利です。
iPadを手にしての商品登録には、そのバックスペースが丁度いい。
臭いが、手を止めさせる。
(ネェ、おばちゃん、ちょっと臭わない?)
(やっぱり~、そうよね、ちょっとアメタ臭いがする…)
ここで、北海道十勝地区方言教室です。
「アメタ臭い」とは、少し酸っぱい、食品が劣化している臭い。
腐敗とまでは行かないけれど…
(昨日もちょっと臭いがしていた。)
(そうだよね~、ちょっと、言ってくるね。。。)
姪は早速に、店長の母親に報告に行きました。
(ショーケースの清掃は、今朝したんですけれど、、)
(でもこの臭い、なんか汗臭い臭いだね。)
そこへやってきた我が弟、店主が言いました。
「ボクはね、きれい好きですょ。きちんと清掃しましたょ。」
潔癖症できれい好き、でも…
その通り、弟は昔からクンクンと何でも臭いをかいで歩く子供でした。
ご近所のお家からいただいた「おはぎ」を、クンクン臭いをかいで食べない。
学校給食は、給食のおばさんのエプロンが汚いと、クンクン臭いをかいで食べない。
そんな子供でした。
「ショーケースの中に入ってみろ、清掃しているから臭いなんてない」
(でも、臭いはする。)
(ウン、確かにするよね。バックヤードの通路にくるとね…)
「分かった。臭い臭いってうるさいな!ここからはオレが登録するからイイよ」
と、高く積まれた商品の段ボールに、彼が手をかけたその時
「あれっ、これじゃないの?」
手にしているのは、彼自身の帽子。
良く配送の時にかぶっているつばのついたキャップです。
彼のキャップは、夏の暑い日にたくさんたくさん汗を吸い込んで、
そして、そのままそこに数日“放置”されていたようです。
お客様のアンテナは鼻と繋がっている。
お店に入って来たとき、お客さんの頭にはとんがったアンテナが立っています。
その時はまだ、買うか買わないか、何がほしいのか、さえ分かっていないのです。
ただ、アンテナは感じています、目の前の色・臭い・店員さんの声と表情。
なんだか清潔感がある、だからここで何か買おう。
なんだか不快・感じ悪い、だから、すぐにここから離れよう。
鼻から繋がったアンテナは、脳。
「0.03秒」で、脳が「買う・買わない」をジャッジしてしまっています。
買う理由は、商品の性能がいい・機能が優れている、そんなことではないんです。
お店に入ったその瞬間に、臭いでジャッジされているとしたら、
その後いくら、丁寧なセールスをしても、お店へのイヤ感を増すだけです。
さて、かの帽子は、早速消臭液に浸けられました。
我がきれい好きの弟は、苦笑い。
姪は「おばちゃん、お父さんも加齢臭グループだね。」と。
さてさて、気をつけましょう。
お客様の買ってもイイ・ジャッジ基準は、あなたの脳にあるものですよ。
―ノグチ
P.S.
日誌をつけています。そんなに難しい日誌ではなくて、何で買ったかのメモです。
でも書くと気づきました。「ほしい!」が先、「理由」は後、なんです。
なんと、この気付きのために、お金をたくさん消費したんだろうか、私は…。