代表野口_黒バック 「今週の一言(いちげん)」第7話説明しかできないからお客様は流れていく。感動している自分を伝えられたら、お客様は振り返って来てくれる。

「集客に問題があると思います。ポスティングが一番効果があったんです。でも団地の自治会からもうポスティングはしないでくれ!とチラシが着払いで戻ってきてしまったんです。」

 

リラクゼーションチェーン店の店長会議で、昨年6月に店長となったO店長は、売上不振の説明をしておりました。そこでノグチが雷を落としてしまった発言です。

 

O店長は、勤続12年目。柔道整復師の資格も持ち、全店舗でも指折りの技術を持っていると社長からも評価されて、この新店舗の所長に就任しました。

ですが、営業不振。客足が伸びずに、店長会議で改善案を問われていました。

 

この店舗は、中高年齢者に多い「膝と腰の痛み」に特化した店舗です。

技術力で痛みを取る!と自身があるメンバーをそろえて、昨年6月に開店しました。

ワンストップで、痛みを取るために、鍼灸師も配置。

全員が痛みに対処できるよう勉強会も定期的に開いて、技術力に磨きをかけました。

 

店舗は、目の前が大規模な団地です。中高齢者が大勢います。

近隣には整形外科もあり、痛みを持つお客様を対象にすれば、差別化がしやすい。

好立地の店舗です。

 

しかも、当初、ポスティングでチラシを配り、団地の副自治会長さんがお客様となり、10名ものお客様を紹介してくれたというのです。

 

O店長は、自身が行った集客活動を説明しました。

ティッシュ配りや、チラシの配布、地域紙への掲載やブログの配信。

その中で一番効果があったのがポスティングだったのに、できなくなったから、だから集客が止まってしまった、と訴えたのです。

 

O店長に質問しました。

「副自治会長さんは、どんな痛みで来店したの?」

一般的な痛みです。腰が痛いのと五十肩です。」

「でも、10人も紹介してくれたというのは、よっぽど痛みが治まったんだよね。」

いや~、普段の運動をきちんとすれば、もっと改善できたはずですよ。」

 

ここで、社長の雷が落ちました。

 

「O店長が、売り上げ不振の原因を“集客だ”と言ったから、話に乗って集客の問題点を聞いてみた。でも問題は、集客の方法などではない。君がお客様の痛みに真剣に向かい合っていないことが、原因だ!!」

 

人は痛いにとっても弱いものです。

普段動かしていないから、突然動かすと、痛みがでる。毎日運動すればもっとよくなる。

そんなことは、誰だって分かっているが、痛いから・体の内部の筋肉はどうすればケアできるのか分からないから、お金を払っても整体・マッサージにやってきます。

その痛みがなくなったのです。この感動を誰かに伝えたい!

副自治会長さんは、たくさんの人たちに、この店舗とO店長を紹介したはずです。

その中のほんの一部が、来店した10人です。

 

「感謝の言葉をかけ技術を褒めてくれている人の言葉に感動できない奴が、自分は感じないお客様の痛みを取る事なんてできない!」と怒鳴りました。

 

そして、証拠を見せてやる!と来客数がず~っと低迷している資料を、O店長の鼻先に突きつけました。紹介があるのに、客数が増えていないのです。

 

社長には、もっと恥ずかしい記憶があります。

数店舗を軌道に乗せ、意気揚々と高級店舗を立ち上げました。

ところが、全く客が来ない。来ているのだけど、1月150人を想定して作った店舗に月35人じゃ本当に閑古鳥がないている。

社長命令で、別店舗の従業員を客に仕立てました。

1時間ずつ休暇を取らせて順番にお客にします、当然車で送り迎えです。

しかも帰りには、A4サイズ一枚分のアンケートを書かせました。

今言うのも恥ずかしいほど、従業員達にコテンパンにダメだしされたアンケートを見ながら、一点一点改善をしていきました。6ヶ月後、客数は月135人になりました。

 

O店長も、学生の時分怪我で通院した整骨院で 自分の痛みを取ってくれた社長や店長に感動して柔道整復師の道を歩みました。資格のない時分は、お客様をさするだけでも感謝されて、顔が真っ赤になるほど嬉しかったものです。

 

資格を取り技術を積むとお客が感謝することが当たり前に思えてきました。

できて当たり前と自慢げな顔を部下に見せている、何よりもお客様に気づかれていたと社長は指摘しました。

 

売上は、お客様の言葉を素直に聞いたかどうかのバロメーターです。

お客様を自分のルールに従わせようと「説明=説得」をはじめると、お客様は潮が引くようにいなくなってしまいます。

「役にたったよ、ありがとう」と感動しているお客様の鏡になると、感動が波状増幅してお客様が増えていきます。

 

社長も反省しきりです。

勤続年数が長い社員は、自分の思いを分かっている、と思い込んでいました。

折に触れ、会社のビジョンを繰り返し伝える大切さをあらためて感じました。

日々の営業活動が機械的になると、つまらない所作の連続、ただただ辛くなります。

社長は、お客様と会話するのがとても楽しいことだと思っています。

 

「“ありがとう”とお礼を言われる商売なんてそうないよ。」

社長はこんなイイ商売はないと言いきります。

営業は、サービスや物を介して、人と人をつなぐ架け橋でもあります。

人と人の架け橋を大切にして人が成長できることを従業員に伝え続けていく。

 

どんな商売でも、一番大事な教えです。