「今週の一言(いちげん)」第94話経営者が、補助金、助成金、で損をしないための基礎知識
「ご褒美って言うのは、取りに行っちゃダメなのよ。
自然と降ってきて、あ~こんなこともあるんだ、と振り返ってわかるのが、ご褒美。
売上は、相手に頼むわけだから。買って下さいとお客さんに頼んでもね、お金が入る時もあれば、ダメなときもあるでしょう。
どちらも「もらうもの」だと考えているから、ご褒美と売上を混同するのね。」
昨今、助成金補助金申請の仕事をしてないのですか?と問われる機会がありました。
確かに、若い経営者から、仲間内で補助金申請が大きな話題なっていると聞きます。
実は私は補助金でイタイ思いを2つも経験をしています。
今日は、私の補助金イタイ経験の1つを共有させて下さい。
「ものづくり補助金」を受けた企業での話です。
取引先設備関連企業から、助成金を受けられるから、設備投資をしてはどうかと提案がありました。
業界団体に協力している企業で、補助金申請も援助してくれます。
提案をいただいた社長さんは、工場の空きスペースに、およそ3000万円の設備投資をおこないました。
普段であれば、設備投資に慎重な社長さんですが、「半額が助成となれば、資金負担はかなり軽くなりますよ」取引先担当者の言葉に背中を押されました。
設備投資は、機械の購入設置だけで済む話ではありません。
機械を運かすには、人が必要です。
人の動き、荷物の動き、安全なラインをつくりが必須です。
何人の人を配置するか、人件費も含めて、どのくらいの売上が必要か?
売上を何処の地域で取ってくるか?営業マンの採用か?チラシで行くの?
設備投資は、経営戦略そのものと言っていいものなのです。
さて、設備投資後、およそ6月後、投資額の半分の補助金が入金されました。
そうです、補助金と助成金の受取は、どちらも設備投資支払の後です。
設備投資をして、その支払を行い、人を配置して給与を6ヶ月支払った後に、やっと入金です。
資金繰りが苦しい企業でしたら、まるで厳しい事業資金展開です。
そりゃー、優良企業と認定されているところにしか、補助金は出ませんよ。
という機械屋さんの発言に、なるほどとうなずきました。
借入金で設備投資をして、さらに人件費がでて、電力費が出て…、
経費がかさむのに、最初から売上がついてくる事業などほとんど皆無。
借金無しで運営出来る企業でなければ、補助金は受けられないものなのです。
さらに、その6ヶ月の間、経理担当者は、報告書つくりに追い回されました。
補助金は、設備投資から現在までに、どれほどの効果があったかを示して初めて支給されるからです。
当初、この会社では、現場の担当者に計測を任せていました。
現場担当者は、正直にうまく作動した日の数字も、そうでなかった日の数字も正直に記入しました。
数字を正直に書いて上司に報告することは、何よりも大事と教えていたからです。
社長が、正直な数字を大事にしているのは、経営には、うまくいかないことが多いとわかっているからです。
うまくいっていないことを改善するには、正直な悪い数字が大事です。
ところが、その数字をそのまま報告書に記載したところ、業界団体事務局からすぐに電話が入りました。
「だめだよ!辻褄を合わせてくれなきゃ。次の人が補助金申請受けられないよ」
報告書は、成果が出ていることを証明するように出来ていなければなりません。
数字はいじるとドンドン現実から離脱していきます。
それはまるで「東芝の決算書」
私は取締役と二人、張り付いて、報告書を作ります。
正直な数字のままで報告書を作成できるまでに、1年かかりました。
「どうすればお金がもらえるか?」
補助金も助成金も、国や地方自治体から交付されて、返済義務のないお金です。
「助成金、補助金どっちもらえばいいの?どっち徳なの?」
補助金や助成金を「タダでもらえるお金」として捉えると間違いをおこします。
タダでもらえるように数字を書き直すことが、しょうがないこと、致し方がないこと、いいことのように思い込んでゆくのです。
補助金は、「一部を補助するお金」。
助成金は、「大変なことを国の代わりに完成するために、一部助けるお金」
事業全部を丸ごと支えてくれる、おんぶに抱っこの資金ではありません。
補助金、助成金は、社会に役に立つある目的を実現するための努力や工夫に対して交付される資金です。
お金がかかって大変なことをしている企業への「ご褒美」なのです。
つまり、企業が行う仕事の一部分を負担してあげましょうね、と言うお金です。
実際多くの場合、もらえる資金は全体の一部分、支払った労力や費用に見合わない場合がほとんどです。
昨日、助成金詐欺で逮捕と大きく報道された事件があります。
逮捕された人物は、時代の寵児スーパーコンピューターで国内外から注目を集めていた人物です。
経費を水増しして、助成金を多く取得できるように書類を書き換えしていました。
この人物がだまし取ったとされる資金は、4億3100万円。
彼が、事業全体に必要と見ていた資金は、300億円。
冒頭の言葉は、高齢の女性経営者が「ご褒美」とはね、と教えてくれた話です。
曰く、「売上は買って欲しいと要求するモノで、ご褒美は要求しないモノ。」
お金が無いから補助金が欲しいと、お考えではありませんか?
「もらいたい」ばかり考えていたら、大変なことになりますよ。
タダより怖いモノはないーことわざは本当です。
▼メールマガジンにご登録下さい
https://www.n-keiei.co.jp/acmailer3/form.cgi