代表野口_黒バック 「今週の一言(いちげん)」第39話社長さん、役員報酬を2倍にしたいのでしたら、労働時間を2倍にするより、今儲かっている事業のお客数を2倍にする企画です。

「経理に給与を増やしたいといったら、できないと言うのです。おかしくありませんか? 一生懸命働いて、売上は2倍になっています。今までの主力商品の他に、お客さんが次に手をだしやすい商品を仕入れて販売したので、客単価が上がっています。だから、経理に言ってやってください。オレの給与を上げるべきだ、と。」

 

社長が手取りを多くしたい!だから働く!とてもイイ話です。

やる気が上がるのは、売上が上がって、給与も一緒にあがること。

給与アップでやる気が上がるのは、社長も従業員も皆同じ。

 

中小企業経営者の一族は、役員報酬といっても、従業員の給与水準とほとんど差異がないというケースが多くあります。

休日返上の仕事や、従業員が帰宅した後の書類整理点検など、労働時間の長さを考えると、従業員より低いと思う事さえあります。

 

ご相談の会社は、高級食品の製造販売を行っています。

この企業の主力商品は、2年ほど前まで、すべて卸売りでした。

品質は、百貨店が販売に乗り出すほどなのに、利益率が低い、儲からない、そこで、工場直売、自社での販売を開始しました。

 

工場直売は、徐々にのびてきましたが、売上高は、卸売一件あたりの半分ほど。

わざわざ直販スペースを作ったのだから、もっと、売上高を伸ばせないか?

お客さまが手を出しやすい商品を同時に販売したらどうか?と考えました。

 

直売所に、来店するお客様目当てに、自社のロゴをいれたTシャツやバック、キーホルダーなどなど、雑貨を置いてみました。と、お客様の購入が進みました。

毎月の売上金額は、直販所の自社商品に匹敵するほどです。

 

自社店舗の売上が2倍になったから、給与も2倍にできる!はずです。

ですが、給与を2倍にするほど利益ない、と経理部門からの報告です。

経理が計算を間違えているんじゃない?と、社長さんは怪訝そうです。

 

《従前の売上の店舗収支》

   今までの売上 100      

   今までの原価  25      

   粗利益     75      

   役員報酬    50    

   販売費     25 

   利益       0 

 

《自店舗売上が2倍になった店舗収支》

   現在の売上  200

   現在の原価  100

    粗利益   100

   役員報酬   100    

   販売費     25 

   利益   △  25 

 

 

売上高が200%アップなのに、なぜに損がでるの?

 

給与は、粗利益から支払います。

粗利益こそ会社全体のエネルギー源、社長・社員みんなの給与の元です。

役員報酬を2倍にするためには、少なくとも粗利益は125(役員報酬+販売費)無ければなりません。

ところが、粗利益は100、確かに給与を上げると損失が出てしまいます。

 

自社で製造販売している商品は、粗利益率が高いのが普通です。

自社のノウハウや強みを販売単価に加味できるからです。

それに引き換え、仕入れして販売する商品は、製造元・流通業者が利益をそれぞれ上乗せしていますから、当社の取り分、粗利益率が低くなるのです。

 

売上が倍になれば粗利益も倍になる、と思いがちですが、単純に倍になりません。

決算書の売上は、利益率が違う商品それぞれの販売金額の合計です。

決算書の粗利益も、利益率が違うそれぞれの商品の粗利益の合計です。

 

決算書や試算表では、売上も利益も合計された金額で表示されるので、なぜ売上が倍なのに、利益は倍にならないか、理由が分からないのです。

 

《売上2倍の時の商品ごとの粗利益計算》

自社製造販売粗利率    …75%  × 100= 粗利益 75

仕入れ販売商品粗利益率 … 25%  × 100= 粗利益 25

  売上2倍のときの 粗利益               100

 

社長の仕事は、かしこく儲かる仕組みを作り出すことです

「かしこく儲かる」とは、どういう事でしょうか?

自社の一番儲かる可能性が高い事業に、中小企業の少ない資金と人材を集中させて、労働効率よく儲けることです。集中して単品で儲ける、主力顧客で儲ける、のです。

 

一番儲かる可能性が高い事業とは、一番利益額が多くて販売数量も多い商品、つまり当社の主力商品を販売している事業です。

社員は、主力商品を購入するお客様も、販売のノウハウも、なぜ購入いただけるかの理由も、よく知っているし、商品に自信があるから、一番販売しやすいのです。

 

では、この会社が選択すべきは、どの事業でしょうか?

それは、一番粗利益の出ている事業、直販所で自社製品を販売する事業です。

 

えっ、直販所は給与を上げられなかったのでは?

 

それは、利益をあげることにコミットしてなかったから、です。

ちょっと勘違いして、売上を上げることにコミットしていたから、です。

 

直売所の売上は2倍になりましたが、自社製品より粗利益率の低い仕入商品も販売したので、利益は思ったほど伸びなかったのです。

 

行うべき戦略は、利益がでる直販所を2カ所に増やすことです。

 

100の販売で、75%の利益、これを2カ所にすれば、社長の思い通り2倍の役員報酬になります。

 

《自社製品販売店2軒 売上の店舗収支予算》

   2店舗合計売上 200      

   2店舗合計原価  50      

   粗利益     150      

   役員報酬    100   

   販売費      25 

   利益       25 

 

企画制作して、雑貨商品販売を伸ばした社長さんは、利益率が低いといわれ、報われない想いがありました。

ですが、直売所を増やすことは、直売所に来ていただくお客様数のアップ狙い、ファンを増やす仕組みです。

売上を伸ばすには、客単価をあげる事も大事ですが、客数を増やすことがもっと大事でインパクトがあります。

 

すぐに、直売所を3店舗にする計画に入りました。

給与倍増計画は、この直売所倍増計画で実行できる予算が立ちました。

数字を見た社長さんは、にっこりです。

 

社長の仕事はかしこく儲かる仕組みを作る事です。

自社の中で儲かっている事業を「そのままコピー」して新店舗を作るも一つです。同じ商品の「販売方法を変えて」直販する、通販する、もその一つです。大きなイベントを企画して「期間限定販売」もその一つです。

せっかくの儲かる事業を、もう一つの仕組みにのせ変えると売上はもっともっと伸びていきます

社長さんも従業員さんも皆が元気になるエネルギーの元「粗利益」を増やさない手はありません。