代表野口_黒バック 「今週の一言(いちげん)」第14話新規顧客の開拓が、いつの世でもどんな商売でも王道です。 人の削減・給与の引き下げ・経費削減は、商売縮小化の始まりです。

「会計事務所の先生にどうしたらいいか聞きにいったのですが、給与を下げろ、

人を削減したらどうか、という話でした。そうするしかほかに方法はないのでしょうか?」

 

東北地方のK市で産業廃棄物の事業を営むY社長は、若干32歳。

急逝した父親から事業を引き次いで4年目です。

年上・社歴年数の長い従業員と折合いながら運営ができるようになったところです。

 

Y社長の会社は、K市の清掃事業の下請けでもう40年の経歴があります。

この春、市役所は、当該事業の一部を3年後近隣3市の合同事業で行うと発表しました。

 

清掃事業の下請といっても、ここで行っているのは、リサイクルです。

市の清掃事業で集められたゴミを分別し、もう一度利用できるよう資源化する事業です。

その一部…プラスチック・ペットボトルのリサイクル事業はY社長の工場の6割の業務。

 

つまり、3年後6割減の売上げになる、という発表です。

 

若くして亡くなった父親から、いわれた一言を信じていました。

「大丈夫だ!役所の仕事だから下を向いてまじめにやれば食っていけるから。」

祖父の代から引き継いだ商売だから、長いことつとめてくれる従業員ばかりです。

 

3市合同事業の立ち上げは、東北地方の日刊新聞に一斉に記事が掲載されました。

その朝から、従業員たちは、「社長、俺たちどうなるんだ?」心配の声を上げました。

どうしていいのか、その日からY社長は眠れない日々が続きました。

 

仕事は、毎日朝から始まります。

ところが、社長はでてこない。

用事があっても連絡がつかない。

 

母親は心配です。でも口を開くと「どうするの、考えているの?」と問いただし口調

「うるさいなー!」と返答してしまう息子。

商売の話し合いではなく、母親の小言に反発する息子の関係になってしまいます。

 

そこで母親は、昔から懇意の会計事務所の先生に息子の一言いってくれと頼んだのです。

 

会計事務所の先生の話は、

「3年経ったら人の削減をすればいい。そんなに心配することはない」

たぶん、父親の死で急に事業を引きついだY社長の心配を深刻にしない配慮だったのでしょうが、心配無用といわれても、Y社長の心配は無くなりません。

 

具体的な対処方法が、Y社長の知りたかったことです。

Y社長は、いままで一度も経験していない人の削減・売上激減時の心構えなど心配の答えは一つも聞けなかったのです。

 

43年前、彼の祖父は、 “リサイクル・リユース・リデュース”という言葉が珍しかった時代にゴミを資源にしたいと深く思って始めた事業です。

この事業をつぶしたくない!大切な事業を広めるにはどうしていけばいいのか?

 

同業者がいます。もちろん父親の代から親しい。

父よりももっと年上でしかも事業規模もずっと大きい。

どこから質問していいのか、全く分からない。

目の前にいるだけで萎縮する自分がいる。

 

経理を担当しているY社長の妹が助太刀を出した。

「ノグチさんが社長のすべきこと教えてくれるよ、高田馬場に通えば?」

 

同業者が商売の拡張をしているのに自社は拡張してこなかった。

たった一つの取引先に頼っていた理由は、「安泰」

今、「安泰」が崩れる時、自社の中にあるノウハウは何だろうか。

 

まず自分の持ち物の棚卸しをしてみるところから始めました。

業務経験の長い従業員はもちろん財産。

リサイクルを支える多くの優良な古物商も財産。

父親が産業廃棄物事業の拡張に慎重だった理由は、不正な事業者が多かったからという理由も次第に見えてきました。

 

次は、Y社長が3年後に5年後にどうなっていたいのか?を具体的に描く事。

その時、社長の周りには、従業員はいるでしょうか?——ハイ!

では、必要な利益はいくら?— 計算してー ハイ!

その人たちと一緒に稼ぐ方法は? →取引先をふやすこと。

一件増えれば100%アップという驚異的な伸び率です。

 

3市の周りにも、市町村はあります。

リサイクル事業もあります。

3市の合同事業に自分たちの業務ノウハウを売る方法もあります。

 

Y社長の挑戦は始まったばかりです。

でも挑戦すると決めただけで、顔は前を向いた、明るくなったと家族はいいます。

目標がハッキリすると、顔も頭もすっきりする、のです。

 

もっと会社をよくしたいという目標達成の一番目は、新規取引先の開拓です。

なぜ、契約するのか?具体的な自社の特性がはっきりするからです。

自社の特性がはっきりすれば、それをお金に換える、形が見えてきます。

新規開拓こそ、商売繁盛の最大の切り札です。