「今週の一言(いちげん)」第30話提案内容は、ドンピシャなのに、なぜかしっくり来ない理由?
「いや〜、支店長自らだから、言いにくかったのだけど、断りましたよ。
息子が立て替えたいというなら別だけど、30年ローンで相続税が安くなったところで、オレの財産が殖える話では無いし、かえって借金が増えるから相続税が安くなるって話でしょう?オレの代ではごめんだよ。」
社長業を息子さんに代替わりして、今は悠々自適の会長職になったSさん、このところ急に数行の銀行支店長から、伺いたいの連絡を受け、会ってみたら全部「相続」
いやー、参ったね。と話し始めました。
銀行さんとの会話は、永年商売をしてきているSさんには大事な仕事です。
銀行はなによりも、“今”の情報を持っています。
特に支店長クラスは、新たな儲かり話やら、大口で動きがある業界について、また地域の土地の動きから地元の商売の動向をよく知っています。
つまり、仕入れるに値する情報を持っています。
ただ、社長を譲ってからは、銀行はもっぱら社長である息子が応対しています。
銀行と言えば、たまのゴルフコンペで話をする機会があるかどうか?
つい最近補助金がらみで新規設備の借入をしたと、息子さんから聞いていますが、自分が関わる話があるのかな?と不思議でした。
支店長さんの話は、会長の相続税対策プランです。
自宅の他に営業所の敷地など、会長が個人で所有している土地があります。
駅に近い土地は、需要がある利回りのイイ・賃貸マンションには最適です。
管理運営は、大手建設会社の管理部門が一切を面倒見ます、と大手建設会社の一級建築士が詳細な建築計画を、銀行支店長が資金繰りを説明してくれました。
驚いた事に、なんと3銀行ともほぼ同じ、「相続対策」
賃貸マンションプランの提案です。
建設資金の全額貸し出しの条件も同じです。
立て続けに同じような提案。
しかも古くから取引のある都市銀行・地銀から同じ提案。
会長は、自分が「相続」を考えておかなければならない年になったと思い知らされました。
何を、どこから、どう考えていいものやら、、、
自分で問題だ、と思ってもなかったのに、人様から言われて急に不安にかられる。
遺言書や、葬儀の事まで、なにか決めておかなければと不安でいっぱいです。
え~ぃ、まてよ。そもそもの不安は、家の耐震基準だったはず。
奥さんから「この家も古屋になって、地震で傾く前にどうかしなくて、大丈夫?」と言われた話を、銀行の担当者に、世間話として話していました。
東日本大震災を経験し、耐震化の話題が大きく報道された次期がありました。
地元の建築業者に、耐震化の補助金がでるプランをと考えました。
では、今般の「相続」提案は、なぜに?
元々営業マンのS会長は、営業をかけるときには、裏に何があるかと考えます。
「相続」は、必ずやってきます、どんな人にも、寿命があります。
普通に考えれば、家族で一番年齢の高い会長が、一番先の「相続」対象者になることは、銀行の言うとおりです。
収入が上がる賃貸マンションで、しかも相続税が安くなるというのです。
奥さんも、「親身になって考えてくれているのね。」と提案を受け止めました。
今回の提案で分からないのは、
「相続」その時はいつか?
今の資産がそのままあるわけがない「これから二人で生活にいくらかかるか」?
銀行さんの提案は、
75000円の家賃が20室満室になって、収入があって
しかも、借金をすればするだけ税金が安くなるか計算できて、
この後、30年間借金の返済をし続ける、事を確定しています。
確定しているのは、銀行からの借入金の金額と利息だけ。
土地の有効活用として賃貸マンションは効果があります。
狭い土地に多くに人が生活できます。
満室で高い賃料が期待できるのは、マンションを欲しい多くの人がいて実現します。
会長が考えた「裏」は、
「は~ん、銀行の貸出先が、ないのだな。借入してまで業績を伸ばそうとしている会社は、多くない。であれば、満室で75000円の賃料が続く可能性が低いな。確かに、一人暮らしの若者・高齢者は増えている。でも地域人口は増えていない。」
会長は、提案が「高齢者で駅前の土地を持っている自分に向けて出来ている。」と理解しました。
でも、提案がしっくり来ない状況がありました。
「まわりにワンルームマンションばかり林立して、全てが満室?とは思えないし、本業は製造業の会長職。事業家として出来る事なら土地も事業に使いたい。」
「隣の芝生はよく見える」ものです。
自分も同じ事をすれば、良くなるハズです。
同じプランを使うには、同じ「背景状況」があって、成功します。
うまくいった事例の背景状況はなんであったのか?
優秀な経営者は、裏取りがしっかり出来ています。