「今週の一言(いちげん)」第153話幹部のいがみ合いは、数字のせい?
「役員の中がワルイ。営業専務と工場長と総務部長の3人。それぞれ大切な部門を預けている。その部門の働きは、一生懸命やっているのだけれど、いがみ合いというか。オレに対しては3人とも従うんだけれど…。」
社長は、時代の要望をつかみ取って、事業を拡大しています。
現場の事業拡大に合わせて人が増え・工場・営業所が増えていきました。
成長している企業です。
製品ごとの工場が増えると、工場を統括する責任者が必要になります。
社員数が増えると、人事労務を統括して報告を出す人事部が必要になります。
もちろん営業が何より大事、社長の右腕が、営業を引っ張ります。
生え抜きの工場長・営業部長・本社総務部長とそれぞれの部門長が育ちました。
社長は営業部長と総務部長が、工場長の批判をしているのを知っています。
「困ったなー、今いる人財で会社を運営したいよ。確かに大変なんだよ、工場は。」
今いる人財が、オレ(社長)の財産
仕事が増えているから人手はほしい。
総務部長が人材会社に手配したり、ハローワークに問い合わせしてるけど…。
この会社、よく言うブラック企業ではありません。
朝は8時半始業で、休憩夕刻5時まで、休憩が1時間半、7時間労働です。
採用をしても、定着しないのは、工場で教えていく考えがないからですよ。
指導が部下を育成しないから、そのまた下の人が育たない。
そう工場長を批判するのは、総務部長です。
いや、工場長はおねだりがうまいだけ。
社長の投資意欲を駆り立てて、設備投資ばかり。
売上より、機械に張り付く人の増え方の方が大きいんだ。
とは、営業部長の言い分です。
工場長は、不満です。
この現場には、優秀な人材は配置されない。
○名配置が標準と決めると、その人数になるようにアルバイトを採用するだけ。
短期的なアルバイトに、この工場でいい物造ろうとか、ずっとここでやっていこうというやる気はないから、教えてもムダ、相手も聞く耳がないです。
営業さんから見れば、売上あげるたびに社長が褒めるし、成果が見えます。
総務部長は、官公庁に出向いては、やれ許可・認可を取ってくるでしょう。
ウチの部署は、ちゃんとやれて当たり前、不備があったらすぐ苦情ですよ。
工場の売上が低いんです、営業が取ってきた仕事の処理だけですよ。
工場直接の売上は、値段も低いし販売量も多くないですから。
確かに、直接の売上は低い。
部門別の試算表では、この工場はギリギリで回っている。
華やかな売上を上げる部署に比べて、地味な下処理の部門は、普段日が当たらない。
日の目を当てないと、生産性はドンドン悪くなる。
会社の事業拡大を支えているのは、利益です。
この工場があることで会社の利益が保たれていることを示す指標はなにか?
利益貢献の仕方は 3種類です。
会社の利益を上げる社員の関わり方は、3種類です。
現場で直接製造に関わる社員
販売して収益を上げていく社員
製造から販売、顧客管理までを受け持つ社員
それぞれ違う利益に貢献するのだから、見るべき指標は違ってきます。
直接製産に関わる社員は、目の前の処理に集中すればいいだけ。
だから、同じ作業をどうすれば短時間でできるかの指標。
もちろん、販売担当チームは、どうすれば収益を大きくできるかの指標です。
当然管理職は、もっと高い基準、会社全体の利益に貢献する指標を持つでしょう。
さて、今回は、直接製産チーム指標です。
それは、粗利益で判定する、労働効率比率です。
労働効率って、簡単に言えば、100円払ったら300円稼いでくれる、400円稼げるが、ぱっと分かる指標です。
社長にとって、それが、平均よりも高いといいですよね。
この工場があることで、外注費は増えません。
外部に持ち出さない運搬費用も助かります。
それらが、当社の優良な粗利益額に繋がっています。
粗利益を部門で分けて、それぞれの労働効率比率を計算したのです。
工場の直接労働効率比率は、全体では平均値。
それを生産品ごとにグラフにしました。
最も直接労働効率比率が高かったのは、高齢者を集めた部署。
最も直接労働効率比率が低かったのは、アルバイトを集めた部署
高齢者であっても、基準の仕事量をこなせる。
制限速度50kmで走行しているようだね。
遅いようだけど、時間内に正確に完了している。
見直しが必要だね、若いのがいい、年寄りがダメじゃないね。
アルバイトが止めるのは教えないから。
キチント教えれば、アルバイトが正社員になり、効率を上げるね。
資格取得を提示すると、アルバイトから正社員へ移行する人が増えました。
工場長が、人件費枠の計算式を知ったので枠内でどういう採用をすべきか考えるようになりました。正しい人の配置を現場で考えるようになりました。
チームで利益を上げる意識は、長い時間をかけて、不満無く現状で働き続けている人達の間で醸し出されていました。
枠は社長が決めますが、誰を採用するかはチームのリーダー
自分達で改善する権限を持ったチームが、自分達のやりやすい方法で、利益率を達成すればそれでイイと社長は考えています。
生産現場の効率化は、売上のアップとはちょっと違います。
短時間にする工夫は、アルバイト・新入社員の外部からの目が有効です。
コンスタントに、採用活動を続ける中で、時短の要望にも応じています。
他業者の営業攻勢を受けながらも、高い利益率を保持している社長。
自社のやり方は、一人あたりの利益を上げ給与単価を上げる方針だと断言します。
利益を上げるには、自社の労働効率を知る事から始まります。