「今週の一言(いちげん)」第158話儲けを出す、質のいい経営
「社員が育ってきたと言うことがあるね。利益が出ていますよ。売上は他社より低いけど、この人数でこの売上、つまり一人あたりだったら、ウチはダントツじゃないの。
パートさんまで時間管理できているから。値段は他社と同じ、でも他所より利益を出す。そうだろう、それが、質のいい経営だってワケだ。」
最先端の半導体工場に納める部品を造っているのは、下町の町工場。
ここ数年のIT業界の繁栄もあるが、利益を上げているのは、この業界にいるからだけでは無いと、社長は言い切ります。
利益を上げる、品質を保持する、それには時間を意識すること大事だと皆が思っている。
それが、量産に繋がっていると経営陣は話します。
ウチは、小規模事業だから、もともと量産体制は作れない。
大きな工場も持てない。
技術者も採用できない。
だから、誰でもできる仕組みを創ったんだよ。
第一、僕は工業大学出身ですが、部品は造れないよ、、、と社長は笑って言います。
精巧な部材は、知識があっても造れない?
お客様は高度技術にお金を払わない?
「逆なんですよ、技術者が製品を造ってはいけない理由がありますよ。」
と教えてくれました。
技術者は、プライドにかけて、高度化してやろう、と考える。
高度で緻密な部材を自ら作り上げようと考え出す。
高度化をお客様が喜んでお金を払うのか?
技術者は、プライドをかけて、速くやろう、と考える。
一個ならそれでもいいけれど、何万個も、同じペースでつくれますか?
「誰でも、この手順で造れば大丈夫、それが僕の会社の品質なんです。」
「だから、イイ技術者は、社長にならなくて、オレみたいな駄ものが社長になるってワケだよ。」と周りを笑わせます。
イイ技術者は、引き算ができないのよーー。頭良すぎるから。
質がいいとは、どんなことでしょうか。
納期は、すぐがイイ。
お値段は、ライバルより安い。
技術は、ライバルに引けを足らない。
お客様から支持され、かわいがられるのは、この3要素を守っているからです。
当社には特殊技術はないから、お客様の喜ぶ要素こそ当社の品質なのです。
お客様が喜ぶ要素を極めれば、利益を上げ従業員を保持できるからです。
時間の「スリム化」を目指せ!
さて、製品をより安く、納期までに、きっちり基準に合致して、生産出来るのは、
「1製品あたり生産時間」を管理しているから、です。
いえ、決して人を追い立てて仕事はしていません。
できない人基準です。
だから、どこを省くか考えるのです。
誰でもできる俺の手順書は、どうやってできてきたのか?
どの手順で進めるべきか、何度も自分で試作して行程を決めていきます。
一つ一つの部材取り付けにかかる時間も計っていきます。
全てストップウォッチで計測です。
時間を計っているのには、もう一つの理由があります。
それは、納期です。
納期は「特別な技術のないオレの会社では一番のセールスポイント」
注文主からすれば、ほしいと思ったときにすぐ手に入ることが一番嬉しい。
高度な技術で、他のところではできない製品であれば、それが強みです。
でも、当社は汎用品にちょっとプラスオン
いったいいつまでに何個製作できるか?
注文する方は、この日程がほしい情報です。
注文をもらってすぐにほぼこの日程でと答え、他社よりも速く、しかも確実に納品。
「時間を管理する」トヨタの粗利が他社を大きく引き離しているのは、労働と部品をダイエットしたからです。
それを「カンバン」方式というのは、ご存じの通りです。
一人あたりの利益を上げるには、製造行程を改善して「スリム化」し生産性を上げて、品質を保つ。
スリム化は引き算です。
質は量を伴う
おかげさまで、品質の良さは、量を引き連れてきます。
こちらは足し算どころかかけ算になっていきます。
今日も儲かるのは、「時間」をみんなに見える化しているからです。