「今週の一言(いちげん)」第21話任せるのは、業務だけ。決定するのは社長の仕事です。
「いつも『任せた』、といっというのですけれど、あとで、内容変更です。任せたのに遅いっていわれるけど、本当に条件が変更にならないのか確定しないうちは、進められないじゃないですか。仕事が遅い、といつもいわれるけど、進めたら後から変更になると、声を掛けたひとみんなに迷惑がかかるから、結局、遅くなるんです。」
社長と財務部長は、新規事業計画の話合の最中です。
計画の進行状況の報告で、資金調達は、全く進んでいないと分かりました。
「今年度はじめに事業計画を全部たてたよね、全体像で10億って話しは役員全員で了解して、そこで財務部長が全体資金の調達計画を進めるとなったよね。」
「話は聞きましたが、物件ごとに、実際の必要資金が違うので、個別に話が決まってからでないと、銀行にも声がかけられない。」
「じゃ、全体像の話は全く銀行には、伝わっていなかったの?」
「個別の金額が決まらないのに、全体の金額が出せないし、第一収益計画ができていないのですから、無理です。」
「各部門長は、ちゃんと売上計画を持っているよ。それに新規の計画が載っていないのであれば、それは部門長に作らせなければ行けない事でしょう?」
「施設規模が決まってないうちに、売上計画人員計画は無理ですよ。」
「だったらなんで、できないとはじめから手を挙げないでよ。」
「社長が、『資金は任せる』っていったから、それは銀行交渉の時期が来たら、きっちりやりますと返事しました。」
毎日のように、数時間今年度の計画と、今後の方針について財務部長と話をしました。
社長さんは、想いを伝えたいと、自分で今年度の事業方針書を作成しました。
ところが、伝わっていない。
とかく社長業はムズカシイ。
社長が任せたのは、社長の決めた出店計画に沿って、資金の年間スケジュールをたて、不足になるであろう資金の調達方法を数行の銀行から情報収集する業務。
財務部長が、任されたと思った事は、具体的な借入作業、金利・借入期間で一番有利な銀行の選択作業と、書類の収集提供業務。
まじめに、やり遂げる力は認めています。
ただ、事業の先を見据えた資金調達は、できていない。
多くの中小企業で、財務が社長の仕事となってしまうのは、将来像が社長にしか見えないからです。
将来像が見えないと、必要な資金が分からない、だから借入もできないのです。
財務部長は、社長が自分にも抱いている不安を感じ、社長が普段口にしない苦労を感じ取りました。
事業計画書には、数字が必要です。
その数字は、お客様を表す来店者数の目標や購入単価など、財務部長が見てすぐに理解できるお客様を現す数字です。
この数字があって、銀行へ話をするストーリーが思い描けるのです。
ストーリーを話して情報を引き出すのは、財務部長の業務です。
銀行から引き出した情報で、決断をするのは社長の役目。
そしてその前に、社長が夢と想いを数字に変えて、事業計画書を作ることです。
会社のあるべき姿が伝わってこそ、業務が全うできるのです。