「今週の一言(いちげん)」第104話オーナー社長なら絶対考えておくべき、渡すもの渡してならぬもの。
「預金通帳の残高はなんて、全く増えていかないよ。それなのに設備投資の借金は増えていくだろう。
大丈夫か?なんて言おうものなら、親父が相続税を減らしたいっていうから始めたことだ、と返事が返ってくる。誰のためにやっているかわかっているのか!と思うけど、言えば喧嘩になるからだまるんだよ…。」
しっかりした後継者を持っていますね、と声をかけると、
「ありがとう、良くやってくれますよ。仕事は良くやるんだけど、毎日顔を合わすと喧嘩ですよ。金のことになると責任転嫁してくる…。」
どういう事ですか?とお尋ねすると、
「会社の営業は、今風というのですかね、インターネットとか、電子取引とか言って我々の時代からは考えもつかない、凄い事をしていると思うのですが、ことお金になると、全部私の責任になってしまうんですよ。」
ご相談のオーナー社長さんは、会社の事業のために自身の所有資産を多く活用しています。
設備投資のための借入は、社長さんの連帯保証付です。
さらに、所有する土地を有効活用しようと、不動産賃貸事業を行っています。
銀行のお薦めで、借入金が相続対策になると言われて、それならばと決断しました。
これからは、家族のためになる事業を開始できたと誇らしい気分でした。
従業員からも取引先からも、社長は凄いですね、資産家ですね、と声をかけられますが、お金が潤沢になっているわけでは、ありません。
確かに収入は増えましたが、出て行くお金もふくらみました。
毎月出て行く管理費用の他に、修繕費や諸税。
固定資産税は、年に4回の支払です、それに住民税だの所得税だのと、支払が重なる月は、資金が間に合うかとはらはらします。
支払日ギリギリにまとめて振り込むので、月末には神経がぴりぴりします。
一日でも預ける日数が増えれば、金利がつくと思って期限末日に支払をしてきました。
しかし、今の低金利です。
利息は付かずに、一日遅れても、銀行窓口で手数料や延滞金の話が出ます。
悔しくて女房に話すと、女房からは「お父さん、なんでそんな非効率なこと!」と言われてかえって腹が立ちます。
「誰のために…。」
息子からは「お父さん、通帳を全部渡してくれれば、オレがやるよ。」と言われて、これも腹が立ちます。
「誰のために…。」
娘からは「お母さんにちょっとは、楽させてあげてよ。」と言われて、ますます腹が立ちます。
「やっているじゃないか…。」
家族のために、一生懸命働いている。
「おれは、大黒柱だ!」と叫びたいけど、叫んだところで
「また親父ヒステリック!」と言われるだけです。
社長さんは、先代から引き継いだ事業をさらに自身の才覚で伸ばしてきました。
一生懸命働いて、お金を稼いで、資産を造ってきました。
それなのに、「相続税が大変だって!お父さん、どうにかしてくださいね。」
オーナー社長にとっては、女房子供の意向は従業員以上に「世間」です。
社長が、どれほど資金があろうが、大きなマンションを持っていようが、銀行との交渉で金利を下げて、会社に利益をもたらそうと努力していようが、そんなことは問題ではありません。
オーナー社長にとって、女房子供の支持「世間」の支持がなければ、ビジネスがうまくゆかなくなるのは、火を見るよりも明らかです。
夫婦仲が悪いと、会社は左前になる…ノグチの経験則だけではありません。
「社長さん、今まで会社のために一生懸命働いて、お金は家族と事業のために使ってきましたよね。
そろそろ、それを後継者にわかるように、マネープラン一緒に書きだしてみませんか?」
会社では、一年に一度決算をします。
同じように、オーナー社長の資産も年に一度書き出してみました。
決算書の説明を受けるより、書いた方が、より自分の姿がわかるものです。
ご相談者は、意外に多くの資産が、会社に提供されているとわかりました
ご家族も、資金はそんなにも増えては行かない理由を、わかりました。
「そうだね、収入がある、と言っても税金の支払いや借入返済で、そんなに手もとのお金は増えないんだね。大きい建物を持つと儲かると思い込んでいるけど…。
逆に、心配になるよ、30年後も借金が続いていくからね。」
「なんだか、おばあさんに言われた『コツコツ貯めなさい』が一番イイ方法のように思えてくるわ。」
「いや~、お母さんは、良くやってくれているよ。助かるよ。」
息子さんも
「会社の資金も、こうやって数年間並べてみていくと、分かる事がありますね。
どこに停滞があるか、考えますね。それにしても、お金がふえていないな~。」
オーナー社長にとっても、後継者にとっても、資金を増やすことは、事業を継続して社員・お客様を幸せにしていくために欠かせない視点です。
資金を増やす手順は、どういう手順でしょうか?
今の資金を明らかにして、どうなりたいのか、目標を立てる。
まずハッキリさせること、そこから始まります。
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