「今週の一言(いちげん)」第166話お金に”おおらか”な会社の行く末
「な~んで、あんなにおおらかなのかしら、庶民には考えられない金額でしょう。給与が10億で、そのほかに積立金額が10億。ウチらが払う税金なんて無くても、あの人から取ればいいって話しでしょう。」
11月19日夕刻、突然の報道「ゴーン・ショック」から1週間が経ちました。
驚いた。残念だ。だけど…、犯罪の核心は何なんだろう…?
N社の大きな工場がある町の会社に伺いました。
仕事を終え、交通機関へ送ってもらう道すがら、車の中で自然に例の話題です。
「凄い金額ですよね~。一人の給与なのに、ウチの売上なんか比べものにならない。」
「いえ、お客様にもN社に勤務する方がいらっしゃるので、あまり批判めいたことは言えないし、大変ですね~。ご心配でしょう。くらいしか言えないんですけど。
ただね、みなさん心配してもなるようにしかならないって、そんな感じ」
晩秋の夕闇の幹線道路。
点灯しているライトは車のヘッドライトだけ。
帰宅する車の流れは、まるで高速道路走行中のようなスピードを感じる。
グローバル企業は、”おおらか”ですか?
車中で思い出したのは、過去の米国から進出してきた企業の経理を見ていたときの事だ。
日本支社長は、しばらくの間進出に関わるコンサルタントが務め、その後採用された。
しかし、経理は、ず~と、外部の会計事務所、つまり私が担当していた。
経理のルールはとにかくスピード。
一月ごとの試算表は、4営業日以内に直接米国財務副社長宛に報告していた。
加えて四半期ごとの決算報告、これも4営業日以内に送付だ。
日本の会計ソフトで一端試算表を作成して、それを英訳して資料を造る。
米国本社があった米国U州の都市とは、14時間の時間差があった。
が、14時間をゆとりだと考えると、夜中に仕事をすることになる。
こっちは、キチンとやったつもりでも、時に「やり直し」命令がやってくる。
「やり直し」の原因は2つ。
1つは、「為替レート」
もう一つは、「税制」
日本円をドル建てにすると、今月の発生は今日のレートでOKだけれど、累計額は違う。
そうだね。累計は前月までの数字に、今月の発生を足し算します。
でも、それでは日本の試算表と評価差額が出てくる。
今日と昨日でレートが違うから、致し方ないじゃない。
まして、先月と今月はレートが違うのは当たり前じゃない!
さらに、税金の計算を加えると、日本の試算表とはかけ離れた資料を延々つくります。
夜中にこのやり直しを命ぜられた時は…泣きました。
やっと、調整してデータを送るときは、
“Thank you for your help.” (あなたに感謝します)
と書きますが、何でそこまでと悔しい気持ちでいっぱい。
「したくない仕事だ!」と思ってました。
しかし、あるところから、何故こんなにシビアに数字を追求するか、わかりました。
本当の危うさは、数字を要求しない事
なぜ、米国本社財務副社長が強固に変更を要求するか?
その理由が分かったからです。
その試算表1つで、副社長自身の報酬も支社長の報酬も業績に連動されるからです。
“おおらか”にしていられるのは、年功序列で給与が保障されている会社だからです。
あの会社にいたら大丈夫、あの社長に任せておけば大丈夫、ってどっちが社長?
そんな人任せの「依存社員」を養っていたら、、、御社も、、、?
PS.
「な~んで、あんなにおおらかなのかしら…」って、時々私も言われることがあって、こりゃまずい~!