「今週の一言(いちげん)」第207話お金が仲違いを生み出した話
From ノグチ
1966年の春、ノグチは北海道広尾町の道立広尾中学校に入学しました。
まるでエスカレーターに乗るように…
町立広尾保育園、町立広尾小学校、道立広尾中学校と
なにも苦労をすることがない、ノホホンを地でいくような子供でした。
加山雄三「君といつまでも」
千雅夫「星影のワルツ」
マヒナスターズ「愛して愛して愛しちゃったのよ」
こんな曲が 流行っていました。
良く覚えているのは、よく聴いたから。
なにせ、私の家の裏通りは、飲み屋さんがずら~っと並ぶ、飲食店街。
私の生まれた町は小さな漁港でした。
高度成長期、小さな漁港は 水揚げ高競争のまっただ中
いっぱい魚を捕って、陸に上がれば飲み屋のおね~ちゃんに会いに行く時代です。
我が家は酒屋。
当然、飲食店が、大切なお客様。
ネオンサイン、ミラーボール…、華やかな歓楽街を目にしてました。
店には従業員さんがいるのですが、
小さなビンものは子供でも配達できる。
そう、サントリーの角瓶を持って、配達する。
時には、ラーメンをご馳走になったりして、、、
手伝っているんだネ、と褒められて、
美味しいものにありつける。
いい、お手伝いでした。
でもその一方で、マイナスなこともありました。
飲食店街には、繁盛する店もあれば、そうではない店もあります。
その差は、通りを歩くだけで、よく分かりました。
ご近所の店に、月末の集金に行くのが私の仕事でした。
繁盛店は簡単。
事務的に、仕事が済むからです。
ところが繁盛していないお店は、難しい。
まず汚い、そして時間にいない、後で採りに来いと言われる。
一部金の入金で、その理由をいろいろ言われて、覚えて親に報告する事になる。
エスカレーター式に地域の子供達が通う中学校には、
繁盛店の子も
そうでないお店の子も通っています。
当然、昨日集金に言った繁盛店では無いお店の子がいる。
しかも、席は隣。
昨日の夕刻の出来事は、彼だって耳にしているかも、、、、
丁度その日、何かの拍子で先生が、家の電話について質問したときです。
(○○番は、お店ので、家のことは△△番にして下さい。)
私は、いつも家で親から注意されている事を答えました。
「なんだ~!、電話が2本もあることを自慢スンなよな!」
―どっと、教室中が笑いのウズにー
1960年代、また電話交換手がいた時代。
電話の普及率は20%位だったのです。
自慢じゃないのに!
瞬間、振り向いた隣の彼の目は、
笑っていなかった。。。
お金持ちか貧乏人か、差は持ち物じゃわからない。
家に帰っても、
そんな話しは、親にはできません。
一番勤務経験の長い従業員さんに、倉庫の陰で愚痴をこぼしました。
「あの子には、本当に自慢に聞こえたのかもよ。
親の商売が美味くないことぐらい、中学生だもの分かるさ
集金したからって、それが悪いことでないことぐらい、あの子にも分かっているよ。」
集金は悪くない。
悲しいのは、お金が無いことで、
彼と私の間に溝ができたことだ。
その後しばらくして、彼のお母さんは営んでいたお店を廃業しました。
彼のお兄さん達が就職し、お金を送ってくれて、
お母さんは、それで生活できるようになったから。
半世紀経っても、まだ私の頭にこびりついている中学制の情景
安定した商売をすることが、どんなに難しい事か。
お金もちは、PCを何台も、電話を何台も、
車を何台も、持っている事じゃない。
使えるお金じゃなくて、どれだけ貯められるか、で計るものです。
―ノグチ
PS.
中学生の時に、お金持ちの定義が分かっていれば、もしかして、同級生との気まずい思いがなかったのかもしれません。
残念ながら、我が家は金持ちではなかった(笑)
お金のルールを知っていると強く生きてゆけます。(大笑)