「今週の一言(いちげん)」第175話お母さん、プレゼント、あれれ、、、
From ノグチ
ホワイトクリスマスの北海道から
カシミアのカーディガン。
あなたがほしいと言ったから、買ってきたのに、、、、
目の前には、古い化繊のカーディガン。
しかも、白い粉(もしかしてこれ雲脂(フケ))
なのに、私のカシミアカーディガンが脚下されちゃう?
(なんで私の買ったプレゼントより、こんなのがいいの?)
久しぶりに会う母にプレゼントを買った。
品物は、カーディガン。
何かほしいものはないかと電話で話したとき、彼女はこう言ったのだ。
「カシミアのカーディガンは素敵ね~」
白い粉のような…
「素敵なカーディガンを買ってきたのよ。」
「いいのよ、私は。服はいろいろな人からもらうから、、」
「でもさ、新宿の伊勢丹で買ってきたのよ、カシミア入りだよ。」
「そうかい。小さそうだけどね。」
「まー、その古いの脱いで着てきて。」
(目立たないけど、汚れてるよね、、、この白いの、もしかしてフケ?)
施設に入っている母の装いは、こぎれいだ。
皆、競うように服装には気を遣っている。
なのに、母が今脱いだカーディガンは、白いフケが沢山ついている。
(でも、まー今日で捨てるのだからいいや。)
(何だ、マントみたいにデカい!古いから伸びたのか!)
(いや、違う。そもそもサイズが?ちがうみたい)
「この新しいのね、サイズが合わないときは取り換えてくれるから、、、」
でも、彼女は手を入れようともしない。
「ほらね、きれいな色でしょう。ベージュからグレーになって、、、」
「ボタンも留めやすい仕組みなの」
持っているものがほしい
車いすの彼女は、手を伸ばして自分の引き出しを開ける。
プラスチックの仲が良く見えるよくある3段引き出し。
そこから、似たような色のカーディガンが引き出された。
「これ、お嫁ちゃんが買ってくれたのよ。
だけど、今着てないの。
だって、暑いから。」
例の白いごみのついたカーディガンの上に、お嫁ちゃん購入品を広げた。
洗濯が行き届いていない、白い粉のついたカーディガン。
その上に、広げられたカーディガンは、私の買ってきた品と似た色合い。
サイズは私のより大きく、彼女のご愛用サイズよりだ。
でも、着ていない。
「今暑いから、カーディガンいらない。」
暑い。
冬の北海道なのに、暑い。
暖房がよく効いた介護施設は、半そででいいくらい暑い。
(暑い…、暑いから、フケがでるのか?)
(洗濯してないのかしらん?…、)
(フケがついているの見えていない?…)
新しいカーディガンは、一瞥されただけ。
いや、せっかくかってきたお高いセーターはこともなげに話の外に
母のカーディガンを買うために新宿までつき合わされた夫と私
それに、車で一緒に母を見舞ってくれたお嫁ちゃん。
三人で、母の話を聞いていたのですが、まー、広げられたカーディガンのフケが気になって仕方がない。
母の話の内容は全く頭に入ってこない。
視点が違うと、見え方も違う。
結局、、、その後は、カーディガンの「カ」の字も話題にのぼりません。
サイズ違いなら、サイズを計りなおして、デパートで交換してもらえば良かったのですが、そのサイズを計る気にすらならなかったのです。
お客様との対話でもこんなこと、ありませんか。
お客様から要求された商品を提供したはずなのに、全く気にもかけられない。
時としてお客様は、商品の内容やベネフィット、オファー。価格。などなどとは全く関係ないところで、NOということがあります。
例えばよくあるのが、「お前からは買いたくない」という、売り手に対する反論。
もし同じセールストークでも、いつも親しくしてくれたこの営業マンからだったら買うけど、このアメリカ帰りのインテリ営業マンからは買いたくない、とか。
いくら、いい商品を提案しても、それを誰が提案したのか、
その時隣にいたのが、亭主なのか息子なのかとか、
今日の天気はいいとか悪いとか、、みたいな。
商品そのものじゃないところで、勝負が決まっていることがよくあります。
それは商品の内容やベネフィット、オファー。価格。などなどとは全く関係ありません。
提案商品の反響がどうしても悪い。と思うなら、、、疑ってみてもいいかもしれません。
商品以外に問題があるんじゃないか?
私の肩に、小さなフケがついてないか?
…と。
PS。
プレゼントの季節ですね。
値段が高いから、高級だから、高い品質だから、喜ばれる・役に立つ、というのは、商品を提案する私達の想い。
すべてクリアしているはずなのに、全く買ってもらえない。としたら、購入者がそれを使うシーン、贈るシーンを想定しなおしてみるのが一案かもしれません。