「今週の一言(いちげん)」第61話売上の大幅な変動が、社長が仕事に集中できなくなる敵をつれてくる。
『「まさか」は、起きるもんですね。大手だからと取引に疑いがなかった。
今回の事件で主力商品の売上は、5割も減少しました。イヤーまいりました。
主力商品がだめになったから、今後は経費を大幅縮小しようと考えています。』
まさかあの大手が!とは思っていました。
取引先の動向はいつも頭に入れているつもりでしたが、結局、ご機嫌伺いの営業になっていました。
普段から売上をいただく取引先だからと、低姿勢で話をし、同業他社との競り合いに勝ちたいがため、不安な財務体質にも突っ込んだ質問はしませんでした。
相手が小さい会社の場合、銀行や会計事務所から与信管理を十分にと指導されます。ところが、その取引先が大手だと「いい取引先をお持ちですね」と言われます。
自社の信用が一気に上がった気分で、社長も耳に心地よく感じていました。
もちろん、製品にはバージョンアップアップもありますから、そのたびに合見積もりはあります。
同じような部品業者は多くあり、価格競争にもなります。
しかし、大手は製品数が多く、しかも新製品のプランも多く出ます。
製品には数多くの部品が必要ですから、1つの製品で数部品を受けることも多く、大手との取引は大きな金額になっていました。
会社の売上の大きな主力が半減してしまったのです。
部門別の売上は、
A部門 50 → 50%減
B部門 15
C部門 11
D部門 8
E部門 8
F部門 8
100
早速 売掛債権の手形を割引して経常収支を安定させる手当を指示しましたが、支払利息も増え、経常収支が悪化します。
銀行からは、すぐに貸出に応じますと連絡が入りました。
短いスパンの借入を繰り返す資金繰りは、社長の神経を萎えさせます。
社長は連帯保証人に応じました。
手元資金がギリギリになりはしまいかと思うと、必要最低限の支出に舵を切る。
資金に余裕がないと真っ先に控えるのは、人材採用や宣伝広告といった営業費。
新たな設備投資は、全額借入に頼るしかない。
新たな借入はさらに支払利息を増やして、経常利益率を押し下げてしまいます。
銀行に説明するためには、売上が伸びていく売上計画を建てなくてはいけないのに、会計事務所がよくやる根拠を説明できない前年比5%UPの事業計画書では、銀行の担当者に会う事さえ気が重くなりそうです。
今回の「まさか」事件後の部門別の売上は、
A部門 25 ← 50×50%
B部門 15
C部門 11
D部門 8
E部門 8
F部門 8
75 (昨対比75%)
一番の大口の売上減で社長の心理は、落ち込んでしまいましたが、実際に今月の売上減少は、△2割5分です。
「この商品自体がなくなってしまうのですか?衰退期から死に筋に入った商品と言うことですか?」
「いや、市場は大きいよ。大手さんはそれぞれ名前が違えども同じような商品を作っているからね、ただウチは、あの大手会社と取引していたから、、、」
売上が大きく落ちた理由は、「取引先の経営不振」であって、「商品の寿命」ではありません。
にもかかわらず、その商品を自社ブランドから消す理由は何でしょう。
理由は2つあります。
1つ目の理由は、社長自身が、取引開始以来ず~っと何十年も関わってきた商品、同じ取引先に同じ商品を同じように納品する事に、飽きているのです。
あの大手会社の商品に、消費者が飽きた。
だから売上がなくなった、と思い込みたいのです。
2つ目の理由は、「不安」で、将来の売上が考えられなくなっているのです。
本来ならまだまだ売れるハズの商品、その数ヶ月先の売上が確信できないのです。
売上に確信がないから、成果のでない営業費にはおカネをかけない、損したくないと思うのです。
冷静に他人の会社のように考えれば、1つの製品で売上の5割を閉めている売上構造は、元来改善していかなければいけないことだし、大手がつぶれないという思い込みも勘違いだし、優れたブランドにしようとすれば、自分が飽きるようなコンセプトではダメだとすぐ分かります。
なぜ、分かっているのに売上に一喜一憂してしまうのか?原因は資金です。
人は元来おカネに無意識に反応してしまいます。
経営者は、このおカネを大枚かけて商売しているのですから、自分が不安になって間違った判断をしないように自分を守っていかなければなりません。
会社の数字に目を光らせて下さい。
預金通帳の残高は、基準の資金を保っているか?
前月より増えたか(減った場合も)、その額と理由。
入金予定と出金予定は、ルール通りの動きをしているか?
季節資金(賞与・納税資金など)は、準備されているか?
損益計算書には表記されない支払勘定の数字がスピーディに正確に社長の元に届いている、これこそ、将来売上を達成するため目標に向かって進んでいると確信できる会社です。