「今週の一言(いちげん)」第38話どの数字を選ぶか?で会社の利益は雲泥の差になります。数字は社長の力量を従業員に見せちゃいますヨ。
「原価率が83%になってしまって、どの経費が多いか真剣に見たけど、どれもみな無駄をしている訳じゃないと分かった。足りないのは売上だよ。今月は3つの部門で前年対比で減してるし、ともかく現金売上が少ない。前月、利益率のワルイお客さんを断ったんだ。どうもその影響が出ているのかな。」
試算表を左手に、携帯電話を右手に持ったまま、社長さんは話し始めました。
経理からできあがった試算表をもらうなり、粗利率を見て、「ウ~ン」とうなり、工場長に電話です。昨月の修繕費の内訳・燃料費の単価・在庫の過多を聞くのです。
修繕費の内訳を聞き、「定期的な経常経費の金額だね。以前から予定していたとおりだ。ウン、燃料費もそうか変化無いね。で、小口の現金売上が減っているのか。窓口が手持ちぶさたになっているんじゃないの、情報流しが必要だね~。」
上がっていいのは売上と粗利益率です。2つの数字が上がると儲かっていきます。
逆に、原価が上がってしまうと、儲けが無くなります。
原価率が上がるとは、粗利益率が下がることです。
粗利益率は、粗利益を売上高で割ることで求めます。
この粗利益率が1ポイントあがったり、下がったりすることで、最終的に利益は大きく変動します。
会社が儲かり続けるための最重要テーマが、この粗利益率を高めることといっても過言ではありません。
簡単な数字の例題で計算してみましょう。
例Ⅰは、今月の社長さんの損益勘定です。
例2が基準月の損益勘定です。社長さんの基準は、81%の原価率です。
例1 売上 100
原価 83
販管費 15
利益 2
例2 売上 100
原価 81
販管費 15
利益 4
利益が2ポイントふえただけ、と見た方はいらっしゃいませんか?
それでは、役員になれませんよ~。(笑)
凄いことです!200%アップなんです。これって、ビックリな数字です。
売上が1億円/月額の会社であれば、利益が200万円から400万円になること。
年間利益は12倍ですから、最終利益が2400万円か4800万円か、その差は大きい。
同じ仕事をしていて、利益が倍ある企業になることができるのです。
利益を出す数字は、4つあります。
①原価率の改善(原価が下がること)
②商品の値上げ
③人件費固定費の削減
④商品販売数の増加(=売上増)
どのポイントで利益を出そうと考えるか?
逆に言えば、どこが一番利益が出やすいと判断するか?
それが、経営方針と利益の差になって現れてくるのです。
②の商品値上げをすると考えたら、どうでしょうか?
利益を2から4にするには、原価が変わらなければ、2%の値上げです。
値上げは極めて効果的です。実行できれば、、の話ですが。
③の人件費固定費の削減はどうでしょうか?
利益から考えれば、15を13にすること、2減らすだけ。
ですがこれは全ての経費を、13%も削減しなければならないと言うことです。
給与を13%削減する。
家賃を13%削減する。
事務費用を13%削減する。
できそうですか?とてもおおきな軋轢をともなう業務です。
業績が低迷すると、真っ先に人件費固定費の削減に走る経営者がいます。
固定費の削減は、固定費が下がるだけではなく、従業員のやる気も、取引先の協力も、下手をするとお客様の評判も削減します。
利益改善を行うには、固定費の削減だけでなく、原価改善や値上げを同時に行うことが必要になります。
さて、社長さんが選んだのは、④売上増です。
原価率が83%のままで、利益を2増やすには、売上は2.4増です。
つまり100→102.4にすること。
値上げとほぼ一緒の数字ですが、全取引先に値上げをお願いするより、こっちが楽。
先月、すでに利益率のワルイお客様をお断りしています。
利益率がわるいとは、実質値下げして売っていたお客様ですから、当社の利益に寄与してくれません。お断りは、社長さんの営業基本ポリシーに合致しています。
けれど、このグループ全ての取引で利益率が悪かったのか?
このグループのお客様に対して原価を下げる取り組みの検討はしたか?
さらに、このグループのお客様に、互いに利益のある取引条件の提案をしたか?
社長さんも営業マンも、値上げより、「より丁寧に商品を説明して売上を伸ばす」方を選択しました。
後日談ですが、翌月には、107%の売上増加となりました。
どの数字を選ぶかによって、経営の成果は格段に違っていきます。
従業員が一生懸命努力しています。
その努力をかしこく生かすのが社長さんの数字の力です。
従業員は、儲けられる社長さんについて行きます