代表野口_黒バック 「今週の一言(いちげん)」第10話「損切りは早く」が商売の基本です。無理やり損を取り戻そうとして、余計なお金をかけると、損がふくらみます。

「このフランチャイズの未収金は、貸倒れにしたくない!我が社で倍の広さの店舗を作って、フランチャイズに運営させる予定です。広さ2倍家賃は同額だから半分で済む。

フランチャイズの収入を増やして、たまっていた未収金を回収します!

 

介護事業のフランチャイズ本部を経営している社長さんからの相談です。

名刺には、たくさんの店舗がずらりと記載されています。その数40店舗。

新規店舗計画かと思いきや、フランチャイズに対する未収金回収計画相談です。

 

損益計算書では、充分利益がありますが、貸借対照表には、大きな未収金が記載されています。フランチャイズ店に対する未収金とのこと、今回はそれを取り返すための計画だと話されました。

 

ここ数年の不動産賃料の下落で出店が本当に楽になったものの、10年前は、不動産バブルの後。まだまだ賃料が高い時代でした。建物を買えば、借入も可能ですが、賃貸では、借入も侭ならず、設備投資資金を考えると自前の店舗を数多く出店するのは、資金繰りから難しかったのです。

 

そんな折、高名なコンサルタントの話を聞き、フランチャイズ本部経営を考えました。

フランチャイズ店であれば、設備資金はフランチャイズが持ちます。

本部が提供するのは、システムやノウハウ。これならば得意です。

 

フランチャイズ店ができて、ますますグループの店舗は増えていきました。

ところが 数年前から事業収支が不安定なフランチャイズ店が出てきました。

介護事業は、介護保険が収益の元。法律改正で、収入が大きくダウンしたのです。

 

このフランチャイズに参加する大きなメリットは天然温泉です。

温泉は高齢者に大人気です。他の介護施設との差がでて、集客に効果覿面!

温泉水の供給元は、フランチャイズ本部です。

この温泉水の代金が支払えないフランチャイズ店が、出てきました。

 

社長は、グループの介護施設だからと、温泉水の料金支払が滞っても、供給を止めませんでした。お客様が喜ぶのなら…、しかたない。と思ったのです。

しかし、毎日/毎月料金はかさんでいきます。一年も過ぎると、その額1000万円に。

 

金額がふくらむと、O社長さんもフランチャイズ店長も、どうしていいのか、結論が出せなくなってズルズル……3年。時間が損害額を大きくしました。

結果として、本当に“水ぶくれ”にしてしまったのです。

 

「損切りは早く」商売の大原則です。

小さいお金が払えない人が、大きな返済はとっても“ムリ”です。

このフランチャイズに対する損切りができなかったのは、金額が大きかったからです。

 

社長は苦肉の策として今回のフランチャイズ未収金回収計画を考えました。

ウチの店舗とフランチャイズの店舗のちょうど中間に120坪の店を見つけました。

ウチの店舗もフランチャイズの店舗も60坪、両方のお客様が利用できる面積です。

家賃は二つの店舗で支払っていた金額の半分です。

 

この店舗をフランチャイズ店に運営させる。

そうすれば、収入2倍で、家賃は半分。

だから、未収金を回収できる。と、社長は考えました。

 

店舗を新しく設営するのは、費用がかかります。

新店舗の敷金礼金前家賃から始まって設備の内装を整える資金が必要です。

加えて現在の店舗を閉じる費用がかかります。申し出から解約に至る期間の家賃や内装を元通りにする現状復帰費用などです。

 

これらの費用を本部が負担すると、未収金はもっとふくらむ事となります。

損を出しているのは、フランチャイズ店経営者です。フランチャイズ店経営者が儲かるための改善行動を行わない限り、損失は埋まらないのです。

 

社長は、「新しい店舗家賃を200万円にするから、大丈夫です。第一ウチが払っていた直営店の家賃がなくなって、この店舗賃料は、60万円で借ります。140万円あれば償却できて、利益も出せます。」と話しました。

 

直営店で出していた利益を、家賃収入にすり替えたところで、利益の増し分は出ません。

60万円の家賃をようやく支払って、温泉水の代金が払えなかった事業者に200万円の家賃を支払う経営手腕があると、誰が保障できるのでしょうか?

 

大きな損を出したくない。貸し倒れは嫌だ!それは当然です。

では、どうやって回収するか?

基本に戻れば、フランチャイズ本部は、フランチャイズ店経営者がもう一度フランチャイズ加盟時のマニュアル・ノウハウに基づいてしっかり経営できるように指導し、長期の返済計画をつくり実行させるのです。