「今週の一言(いちげん)」第172話魔法の売上がほしい方へ
東京の町工場から…
工場の始業は8:30だ。
だが、9:05に訪問すると、まだ朝のミーティングが終わっていない。
どうやらクレームがでた事と、熟練退職者の引き継ぎについて話しが長引いている。
「引きついでいますよ。退職者から話は聞いています。」
「同じクレームが2回続いたから言うワケじゃないけど、引き継がれていたら、同じクレームにならないと思うんだよ。だからもう一度彼の手順やスキルを聞いてほしい。」
こんなに売上が順調なのに、毎日の膨大な仕事に追われて従業員の目尻は上がったまま。
それぞれの持ち場はちゃんとやっているハズなのに、なぜかどこかにミスが出る。
納期、不具合、値下げ圧力、ただ社長の責任だ、じゃすまない…。
データ採りを止めた理由
小さい工場だが、AI関連の部材を生産しており、この数年売上は順調だ。
大手の退職後、腕に覚えのある技術者を集めてきた経緯がある。
部材が軽い事もあって、勤務している人材は高齢者が半数以上だ。
数年前、ある従業員が止めた。
高齢でもあったが、経営者と給与の折り合わず退職した。
退職した従業員の仕事は、製品のデータを採りだった。
製造にあたって、全ての製品を画像で採る。
報告先は、先代の社長。
もちろん、先代社長から仕入担当役員や製造担当役員へ情報が提供されていた。
先代社長が高齢で二代目社長に引き継がれた年、会社は不況の中にいた。
データ採りだけで、製造しない・販売しない・給与に文句を言う・社員は二代目社長と対立。
高齢を理由に退職していった。
今、好況のまっただ中で、三代目に引き継ぐ事になった。
受注は好調だが、クレームが良くでるようになった。
ボリュームが大きくなり、納期が守れなくなってきた。
あなたは、現実を正確に見る勇気を持っています。
データ採りは、発注される製品の型式を推移グラフから教えてくれた。
データ採りは、仕入れする部材の予定数量を判断する大きな材料だった。
データ採りは、作業手順のタイム管理をして、納期予定を確約できる情報だった。
経理を雇っても、データを管理する人材を雇っても、すぐに売上に結びつかない。
売上をすぐに上げてくれる魔法の数字は、実はこの世にない。
あなたは分かっています。
必要なのは、ほしい状態を示す数字と現実の状況を示す数字だと。
ギャップがある事が怖いのではなくて、知らずにいることが怖いことだと。
なぜなら、不具合は必ず起こるからだ。
データをとる、
数字の意味を確認し合う、
会社の目標に添った部署の目標数字を決める、
改善策のプランを出し合う、
やるべき事とやる期間を決める、
報告先と報告する数字を決める。
数字で報告する、結果から改善案の再訂正プランを実行する、またデータを採る……、数字はとり続けるのだ。
トヨタの改善が「カイゼン」という世界標語になったのは、数字を採り続ける仕組みが、世界中のどのようなビジネスでも必ず成果に繋がるからだ。
数字を採らずに成果が出た。
それをラッキーと呼ぶか、魔法というかはそれぞれだろうが、カイゼンとは言わない。
再現性がないからだ。
儲かり続けるには、どの数字を採るか決める・採る・検討する・また採るを繰り返すしかないのです。
PS・
データの大事さが分かっている経営者の方々にとって、クラウドは朗報です。平成の30年はインターネットが成長した期間です。ITの進化の恩恵を経営にとり入れる時が来ました。
データの取り方は、進歩しています。あなたも私も、そして中高生から高齢者までスマホを持つ時代です。このコラムのトップにスマホの写真を載せた、理由です。