「今週の一言(いちげん)」第162話「成否を判断する指標」をお持ちですか。
先日、高齢の古くからのお客様にお会いして、気づいた事があります。
先代から事業を引継、昨年息子さんにバトンタッチした経営者です。
成功する経営者は、「成否を判断する指標」を持ってらっしゃいます。
久しぶりにお会いし、早いですね、もう年末ですよ。来年の計画を考える時期ですね、と話しを向けると
「いや~、来年のことは考えられないですよ。先のこと考えて、と10年先の心配して事業をしてきたのに、ことごとく外れてますからね。」
えっ、事業は息子さんに引き継がれているのでは?
いや、今心配なのは相続ですよ、相続。
成功しているのに、まだ不安がある…?
10年後はもっともっと土地の値段が上がるはずだ、そう思って仕事をしてきたんですよ。店舗の敷地も倉庫の敷地もアパートの敷地も、とにかく買わなきゃってね。
でも、言われるとおり、値段が上がったとしても、売れないんですよね、事業用は。
息子が事業は継いでくれたから、それはいいのだけれど、土地の借金もそのまま引き継いでもらうのはいささか父親の面子が…、苦しいな。
借金だらけで、これがそのままというのはね~。
事業は息子に継いだ。
しかし、あれこれ買った土地の借金が残っている。
しかも自分名義の借金だ。
税理士さんから、借金は相続税に有効だからそれはこのままと言われた。
だが、結局息子が引き継いで払うワケだから、自分が土地を残してやったとは言えない。
さらに、相続税だって支払がある。
息子は何も話さないが、女房がしきりに相続の心配を口にする。
銀行や商工会、市役所主催の説明会チラシがテーブルに置かれている。
女房に俺は先に死ぬから、問題を抱えているのは君だろうと言うと、「なんて無責任!」と怒り出す。
「会長、何がご家族にとって大事でしょうかね~」
大事なモノは、なんですか?
そりゃ、事業だよ。
家族の基盤は事業だ。従業員の生計もこの事業が支えている。
自分も家内も息子もその家族も健康でいてほしいし、その生活を支えるのが事業だ。
会長は明確な「価値観」を持っています。
経済的な基盤や家族や健康、従業員や地域の人々の繋がり。
タダ普段、それを書き出したりはしないだけです。
会長の言葉を手元にあった紙に書き出していくと、
「ちょっと見せて…、そうだ、そうだ、この倉庫の土地は倉庫ごといらない。借金を減らそう。こっちの店舗は、これを手放すときは、事業をたたむ時だな。」
「つまりさ~、毎日息子が元気で仕事をしてくれるのがいいんだよね。」
「だってね、心配なのさ、息子の手腕に。やっていけるのかな~と思うわけだ。」
では、具体的な失敗エピソードはありますか?と尋ねると、
「いや、具体的に何が失敗と言っても…、
商売だからうまくいかないこともある、と言う程度なんだけれど…。
借金ばかりの俺の方がダメかもね(笑)」
「(笑)いや~、ありがとう。
そうだね、1年後に息子の仕事がうまくいっている状態を俺が信じてなければね。
良かったよ、話して。」
おカネの心配は、心を乱します。だから、書いて置く
経済的基盤の崩れが、精神・生活の不安定を引き起こします。
貧しくとも、精神は高貴でいられる人間は、ごく少数です。
たとえ、ご自身が高貴な性質をお持ちであっても、家族全員に自分を押しつけてはいけません。
どの順番で資産を現金に換えるか、紙に書き出すと、「これに手をつけたら、事業をたたもう。」という判断基準がハッキリします。
生活のために方向転換をするのは、失敗ではありません。
失敗とは方向転換出来ないことです。
何も事件が起こっていないのに、「事件が起こるに違いない」とオオカミ少年になる
そんな必要はありません。
たった1つの事をしさえすればいいのです。
1年後どんなにいい状態になっていたいか、その時あなたはどんな気分になっているか、
それを白い大きな紙に書きさえすれば、それでいいのです。
それを「事業計画」と呼びます。
来年の成功を紙に書くと、来年あなたは喜んで笑っています。
PS.
紙に書かないと、大抵忘れます。その時の気分も忘れます。なにせ私達は、一日に4万6080もの否定的考えをする動物ですから。